2012年12月1日土曜日

「不平」の多い都会人

昭和61年中学二年生の8月号です。
今日から師走ですね.
えー!もぅそんなん!?」
悲鳴に近い声をあげた
方々も多いのではないで
しょうか?
(実は)僕も紛れもなくそ
の一人なのですが,既に
声をあげる気力すら喪失
している,と表現した方が
むしろ,「正確」かもしれま
せんね・・・(^_^;)

さて,前頁に引き続きまし
て鉄道愛好者専用雑誌に
ついての話題で恐縮です.



さて×2,この雑誌には「タブレット」という読者投稿欄があります.
その投稿欄の中でも特に「選ばれし者」の色彩の濃い「読者論壇」
という論文のコーナーがあります.
当時14歳の少年だった僕が,「大阪」という都会と認識されている
エリアで鉄道ファンのアタマに強烈なひとつの投稿がありました.
26年経過した現在でも,僕の鉄道愛好家としての「スタンス」と
して,心の片隅に常時置いている原点となる論文です.
この論文の作者は,僕とわずか2歳しか違わない,当時16歳
富山県にお住まいの少年だったのでした.
少し長くなりますが,今日は自らの手で転載させていただきます.
もし,お読みくださった皆さまは,如何お感じになるでしょうか?

都会人の鉄道意識について
 近ごろの本欄を見ていると,じつに自分よがりな人が多い.しかも
彼らのほとんどが大都市在住だ.
 私の言う自分よがりとは,サービスが悪いだの車両がどうのこうの
といっていることである.例えば5月号の「203系の改善を望む」など
はどう考えても,ぜいたくな望みであるように思える.私のような田
のものは車両の良し悪しに関してさほど文句は言わない.運転本数
に関しても同様.これは鉄道輸送に関してにぶいのではなく,鉄道を
生活の中心として動いており,鉄道を中心にサイクルされているので
ある.例えば,ちょっととなり町へ行くにしても1時間も2時間も列車を
待たなければならず,大変なことになる.
 一方,大都市圏内では電車がひっきりなしに発車し列車の種類も普
通や快速など多様なバリエーションがあり,待たずに乗れる.地方の
ディーゼルカーにくらべれば到達時間だってグッと短い.おそらく都会
の人はこれが鉄道だと思っているに違いない.おおげさだが,大都市
の鉄道の姿が本来の鉄道の姿であると思っている人,あるいは身ぢ
かな鉄道の利便さを忘れている人がかなりいると思う.
 私のような田舎者から見れば大都市の鉄道はまさに極楽か天国の
ように思える.あれほどの運転本数,速くてディーゼルカーよりはるか
に乗り心地のよい電車の世界はぜったいに極楽だ.しかも地方にくら
べて大都市圏の国鉄運賃は安い.これほどの,申し分のないような鉄
道をなぜそんなにもけなすのか.これ以上のものをまだ求めたいのか.
 私は鉄道が好きだ.本誌に投稿される方もそうだと思う.ならば,
なぜ少しくらいガマンをしないのか.国鉄が大赤字を背負っていても
大都市圏にはあれほどたくさんの列車を走らせてくれているのに,ま
だ不服があるというのか.それではあまりに自分よがり・・・
 大都市のみなさん,あれほど便利で快適な鉄道を見直していただき
たい.不便で乗り心地が悪く,運賃の高いローカル線を頭の中に想像
すればわかることと思うのです.

以上です.

※ちなみに,論文中の「203系」と呼ばれる電車は,昭和57年に登場
した,東京の常磐線と営団地下鉄(現:東京メトロ)千代田線とを乗り
入れ直通運転するために設計された電車でした.(昨年9月に引退)
カラーブックス702「国鉄の電車’86」S61.3.31発行(保育社)